センバツ強行開催に踏み切れなかった理由。強まった周囲の反発／球界の論点

新型コロナウイルス感染の脅威が収まる気配が見えない中、甲子園球場で3月19日に開幕予定だった第92回選抜高校野球大会の中止が決まった。
日本高校野球連盟の八田英二会長は11日、大阪市内で開かれた臨時運営委員会後の会見で、「教育機関として選手の健康を第一に考え、苦渋の決断をさせていただいた」と説明した。

高野連は1週間前の4日に無観客試合を前提に準備する方針を示している。しかし、「専門家の方々の意見を聞きながら何とか球児の夢をつなごうと考えたが、100パーセント予防することは不可能」（八田会長）として開催を断念。
予定されていた選抜大会としては史上初の中止となった。

新型ウイルスが話題となった当初、高野連は通常開催の方向だった。だが、国内外で感染による死者が増加するなど事態が悪化。
「若年層が感染の起点になるとも考えられる」という政府見解などもあり、理事の中にも無観客での開催もやるべきではないという意見が出始めた。
暫定で無観客開催方針を示した高野連は、最終結論を出すとした11日まで、懸命の予防策を模索。選手へのマスク配布や検温、場内に消毒液や空気清浄機を設置し、消毒したバスを選手宿舎からの移動用として用意するなど感染対策に努めた。

水面下会合では、阪神と東日本の二つの大震災直後に開催して日本中に勇気を与えたとして大会を強行しようとする勢力と、大会自体が感染源となるリスクを恐れて反対する勢力が激突した。
政府が緊急事態宣言の必要性を審議し、世界保健機関（WHO）がパンデミック（世界的流行）の可能性を持ち出すなど社会情勢も急変。安全開催の根拠を積み上げる理論武装は不可能に終わり、開催強行に踏み切ることができなかった。

高校の他競技イベントが軒並み中止となる中で、高野連だけが「独自で判断する」と頑なな姿勢を示した。この一連の流れは高校野球の特異性が根底にある。
国民的スポーツとして100年以上もの伝統と人気を誇り、「聖地甲子園」を目指して球児が夢をつなぐ。メディアは日本人が好む汗と涙をクローズアップし、ドラマ性のある娯楽に仕立て上げた。
大勢のファンを背景に、甲子園を生業としている周辺産業がある。肥大した高校野球は、単なる一競技ではなくなった。選手と父母にしてみれば、甲子園出場という勲章は就職や進学にも大きくかかわってくる。
それら責任を背負っている高野連は、簡単には中止を選ぶわけにはいかないという事情があった。

最後の最後まで強行開催の道を探っていた高野連だが、その独自路線ゆえに周辺の反発も強まった。出場32校を対象に行ったアンケートでは、ほとんどが「何とか開催をしてほしい」という希望が多かった。
しかし、関係者は、「感染拡大が深刻化するにつれて、各校の足並みが乱れてきた」と明かす。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200316-00000004-baseballo-base
3/16(月) 11:02配信

世論を含み、特色や現実を考えず一斉に横並び自粛を強いるという動きは危うさをはらんでいる。
だが、未知の感染症が収束する気配がない中、今回の高野連の決断はやむを得なかったのだろう。
八田会長は「選手の夢のために努力を尽くしたいと思ったが、中止せざるを得なかった。
教育関係者として、総合的な見地から考える」と話した。今回の騒動が、高校野球のあり方を再考する、いいきっかけになればいい。
投手の登板過多、夏の甲子園の炎天下の過密スケジュール問題など、課題は山積みだ。